ボクのおばあちゃんは毎日、いつもかわらない生活を送っていた。ボクはおばあちゃんの毎日を見て退屈しないのかなって
思っていた。でも、違ったんだ・・・。おばあちゃんは、そんな生活を楽しんでいたんだ。
朝、日が昇り始める頃、目を覚ます。布団をたたんで、顔を洗う。そして、縁側の雨戸を全部開ける。ちょうど、雨戸を開ける頃
空は白んでくる。おばあちゃんは空を見上げてにっこり微笑む。お天気なら「今日は仕事日和だね」と言い、雨なら「今日は大地が
潤う日だね」と言う。おばあちゃんにとって、悪い日はない。ボクは雨なら嫌になる。だって、学校に行っても運動場で遊べないから。
その話をしたら、おばあちゃんは雨が降るから、美味しいご飯が食べれるんだよって教えてくれた。それから雨が降るから晴れの日に
お外で遊びたいって思うんだってことも教えてくれた。・・・そんなものなのかな?
今日は雨だった。ボクは学校から帰ってきてから退屈で、縁側からしとしとと落ちる雨の滴を眺めていた。
すると、雨に紛れて一枚の紙切れが空から降ってきた。ボクは驚いてその紙切れを拾い上げた。
そこにはクレヨンでこう書かれていた。
なあに?これ?ボクは捨ててしまおうと思った。でも、なんだか気になって、じーっとクレヨンの字を眺めていた。
すると、小さく「チリーン」って音が聞こえたんだ。ボクは空耳かと思ったけど、また「チリーン」って音が聞こえたから
立ち上がって、辺りを見渡してみた。すると、縁側の端に吊り下がっている風鈴を見つけた。
「あっ!」ボクは風鈴の下まで駆けていった。風鈴は確かに「チリーン」と鳴っていた。ボクは下から、風鈴を見上げていた。
風鈴には、また、紙切れがくっついていた。ボクは届かなかったから、台所から椅子を取ってきて、紙切れを取った。
今度は難しいぞ。なんだろキラキラ光るもの・・・。ボクは家中を走り回った。キラキラ、キラキラ・・・
やみくもに探しても駄目だな。もう一度、ちゃんと読もう。ボクは風鈴の下に戻って、紙切れを広げた。
スイスイ泳ぐ人魚って書いてある・・・泳ぐってことは「水」のことかな?
ボクは、玄関に置いてある金魚鉢の方へ向かった。そこにはビニール袋に入った紙切れが浮かんでいた。
金魚たちがビニール袋をつっついている。「うわぁ!危ない危ない」急いで拾いあげる。
これは簡単だ!ボクがおばあちゃんに買ってもらった絵本で一番お気に入りのお話だ。
ボクは自分の部屋へ急いだ。そして、お目当ての絵本を引っ張り出した。大正解!
赤ずきんちゃんが、ベッドで寝ているおおかみのお顔をのぞきこんでいるページに紙切れがはさんであったんだ。
ボクは赤ずきんちゃんの絵本を持ったまま、風鈴の下まで戻ってみた。すると・・・さっきまではなかったのに小さな小箱が置いてあった。
ボクは恐る恐る小箱を持ち上げて、ふたを開ける。そこには、ピカピカ光っているビー玉が小箱にぎっしり入っていた。ボクは一つを持ち上げてみる。
ビー玉はキラキラと七色に変化した。ビー玉ごしに空を見上げる。雨はいつの間にか上がっていた。ボクは嬉しくなって裸足のまま外に飛び出したんだ。
そしたら、おばあちゃんが縁側からこういったんだ。「雨上がりは気持ちいいだろ?」って。
おわり・・・