Make Sure The Dream 10

 三人は、目を輝かせて栞が作った小物たちを見ていた。そんな男たちの異様な光景に気付いた咲良は声を掛けてきた。
「なになに?栞のファン?」にやけながら見ている。小物を見ている彼らを咲良は逆に品定めしていた。
「結構、レベル高いんじゃないの」小声で菜月に囁いている。
「ですよね〜。栞さんとどういう関係なんでしょうね〜。」咲良と菜月は少し距離をおき、栞と彼らのやり取りを見ることにした。

「やっぱり、もう一度改めてお願いするよ。他にお願いする人がいないんだ!栞さんの腕ならサイコーにいい物を作れると思うんだ。」匠は確信を 持って、栞に懇願する。
「人助けをすると思って、ね?」響も栞に頭を下げる。栞は困惑してうろたえる。
「そんな、みなさん私を買いかぶりすぎです。私、そんな自信ありません・・・」
「そんな事ないよ。俺、洋裁の事詳しく分からないけど、これ全部自分で考えて作ったんでしょ? 色彩考えたり、使いやすさ考えたり・・・多分、ミシンを扱ったりする技術っていうより、 こういうアイデアが浮かぶ事って才能だと思うよ。俺たちにはできない事だよ。それに俺たちがいた演劇部の衣装担当の子達にも出来なかった事だよ。 もっと自信を持っていいと思うけどな・・・」颯は心底そう思ってくれているらしかった。それだけに、躊躇なく返事をする事ができない自分が恥ずかしかった。

「あんた、偉い!」栞の背後から大きな声が飛んできた。颯たちはそれまで咲良の存在には気付いていなかったようだった。
「栞の良さに気付いてくれるなんて、うれしいねぇ。あんたたちいい男だよ。なんだか、事情はよく分からないけど、 栞を必要としているなら、使ってあげてちょうだい。この子は大人しすぎるから少し心配してたのよ。」咲良は結局話しに加わっていた。
「咲良さん、私・・・」
「大丈夫、もっと自信を持ちなさい。ここにくる大半のお客さんは栞の作品目当てなの知っているでしょ? ちょっと場所を変えて作品を作るだけなんだから。人助けするのもなかなか気持ちがいいもんよ。」
「おばさん、話がわかるねぇ〜」響が咲良に握手を求める。
「誰がおばさんよ、25歳を捕まえて!」響の手を力任せに握り返した。
「えっ?まじで、25?」響が咲良の顔を覗き込むと咲良の背後で菜月が思いっきり首を振って否定していた。

「で、あなたたちは何をしているの?」
その日の夜、仕切りなおしに近くのパスタ屋で食事をする事となった。あれだけ、賛成してくれた咲良のこの質問に颯たちは持っていたフォークを 落としそうになった。
「おばさん、そんなことも知らずに話に加わってきたのかよ?いてっ!」どうやら響は「おばさん」という言葉で下から咲良に蹴飛ばされたようだった。
「あんたたちの一生懸命さを見ていたら、悪いことに誘っているわけじゃないの分かっていたし、何より栞の作品をあんな風に見てくれてたの私も嬉しかったし。 栞にはいいチャンスじゃないかな?って思ってね」
「咲良さん・・・」咲良がそんなにも自分の事を思ってくれていたと知って栞は嬉しかった。
「あれ、きっと上玉の若い男の子たちを手放したくなかったんですよ」菜月が水を差すように耳打ちする。
苦笑気味に颯は『スペースシャトル』の話を咲良と菜月に話し始めた。

 パスタ屋では颯たちに加え、話好きな咲良と菜月たちがいた事により、あっという間に閉店時間になってしまった。 逆算すると5時間は話込んでいたことになる。すっかりと夜も更けてしまい、栞は颯に送ってもらう事となった。 ・・・周りのお節介連中の仕業だったのだが・・・